カルナバイオサイエンス株式会社

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社長メッセージ

2024年 年頭にあたって

2023年は、当社にとって大きな飛躍の年となりました。まず、ギリアド社が現在開発中のDGKα阻害剤GS-9911のフェーズ1試験が米国で開始されました。当社がライセンスアウトしたプログラムから選抜された新薬候補化合物が臨床試験に移行した最初の例で、当社にとって正に記念すべき年となりました。GS-9911は抗腫瘍免疫で中心的役割を果たすキラーT細胞の活性を高める薬物で、臨床試験でその効果が実証されれば、免疫を介した抗腫瘍薬として現在使われている抗PD-1抗体と並ぶ免疫治療の柱となる重要な薬となることが期待されます。そのため、この臨床試験はカナダやオーストラリアを含む国際共同治験として実施されており、GS-9911に対するギリアド社の強い期待と意気込みが感じられ大変うれしく思っています。もう一つ重要な進展は、治療歴を有する慢性リンパ性白血病(CLL)・小リンパ球性リンパ腫(SLL)およびB細胞性非ホジキンリンパ腫(B-cell NHL)の患者を対象としたBTK阻害剤AS-1763のフェーズ1b試験が米国で始まったことです。テキサス大学MDアンダーソンがんセンター白血病科のNitin Jain准教授主導のもと多施設における臨床試験体制が確立され、臨床試験が進んでいますので、今年はAS-1763の患者様での初期的な安全性、忍容性、有効性に関する結果を学会等で発表し皆様にお知らせしたいと考えています。当社が創製した新薬候補化合物に関して患者様での有効性を示唆するデータが得られれば、当社の創薬力が本物であることを示すことができるとともに、自社単独で患者を対象とした臨床試験を米国でも実施できる開発力を示すことにもなりますので、結果を大変楽しみにしています。学会発表で注目されると、色々な2次媒体が学会レポートとして情報発信してくれますので、AS-1763を全世界の製薬企業、アナリスト、機関投資家に幅広く認知していただけると考えています。さらに、慢性特発性蕁麻疹などの免疫炎症性疾患などをターゲットとするもう一つのBTK阻害剤sofnobrutinib(AS-0871)は、健康成人を対象とした2週間の連続投与試験(MAD)が終了し、最終報告書を受領しました。その結果、安全性、有効性(慢性特発性蕁麻に関係する免疫細胞の抑制効果)が確認され、フェーズ2試験に進んで問題ないことが確認されました。これを受けて昨年11月より導出交渉を本格的に開始しております。CDC7阻害剤monzosertib(AS-0141)は、国立がん研究センター中央病院および東病院にて固形がんの患者様を対象に、最大耐用量を求めるための用量漸増試験を実施しており、次の拡大パートで使用する臨床用量と投与スケジュールが固まりつつあります。また、拡大パートでは、固形がんに加えて血液がんの患者様にもエントリーいただき、フェーズ2以降の臨床用量を最終決定するとともに、効果の期待できるがん腫を絞り込む予定です。今年の後半から来年にかけて、拡大パートの有効性に関する探索的なデータが出始める見込みです。以上紹介したように、今年は当社のパイプラインの実力が少しずつ明らかになり当社の今後の成長性が見えてくる極めて重要な年となります。その中で最も成長性を期待しているのは、AS-1763であり、今年はこれを将来の大型導出につなげるための万全の体制を構築していきたいと思います。AS-1763をブロックバスターとするためには、メガファーマや大規模バイオベンチャーへの導出を成功させることが必須と考えています。メガファーマへの導出を成功させるためには、良好な臨床試験結果が重要であることはもちろんですが、信用のある会社であることも極めて重要と考えています。株価を上げるIRを出すようにとのご意見をいただくことがありますが、このようなことは株価操作と見なされる危険があり、製薬企業が最も嫌うところです。当社は今後も信用を最重要視して細心の注意を払いながら情報を発信してまいります。
これまでの皆様のご支援のお陰で、やっと当社の大きな成長が見えるところまで到達することができました。今後も、しっかりと臨床試験を進め、長期に渡り当社をご支援いただいている株主の皆様のご期待に一刻も早く応えるべく全社一丸となって進んでまいりますので、今後も変わらぬご支援のほどよろしくお願いいたします。

2024年1月

カルナバイオサイエンス株式会社
代表取締役社長 吉野公一郎