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ルシフェラーゼ連載エッセイ
連載エッセイ ~Elucをめぐる旅の物語~
生命科学の大海原を生物の光で挑む
投稿日 2026年01月22日

- 第 143 回 Elucをめぐる旅の物語-ルーマニア→日本→タイ→ルーマニア
- 近江谷 克裕
産業技術総合研究所 バイオメディカル研究部門
年末を日本で過ごし、年始をタイで仕事をこなし、ブカレストに戻ったら、そこは雪国であった(写真1,2)。多くの雪が積もっているわけではないが、零下の世界。朝晩は零下10度前後となり、とにかく寒い。私は札幌に3年間住んだことがあるが、寒さの質が違うと思った。ただ、北海道と似た部分で屋内は暖かい。大学内も宿舎も集中暖房のお陰で、Tシャツ一枚で過ごせる点は、日本とは違っている。ルーマニアはEUでも屈指の資源国で、天然ガスや石油は自国で多くは生産できる。政府は今年の使用分に不足はないと説明している。
新年早々、タイに向かった。タイでは私がお世話になっているVISTECと日本の産総研の合同シンポをオーガナイズした(写真3,4)。今回は2つの組織を中心に日本の企業3社、タイの企業にも参加いただいた。この趣旨は、産総研の若手研究者に日本の研究者の立つ位置を知って欲しいという思いだ。同じく“バイオモノづくり”を志向しているが2国間では全く違う立つ位置にいる。つまり、日本の研究機関の多くは主に1リットルから多くても10リットル程度の培養による”バイオもの作り “を研究対象とするが、タイの企業が担うのは100リットルからトンレベルにスケールアップされた世界の話だ。その苦労話を日本の若手に聞かせたかったのである。併せてプラント見学し、自分たちと違う”バイオもの作り“を実感してもらう狙いだ。
スケールアップの難しさは、驚くような話ではなく、日本では法規制、環境問題で、多くの企業は、スケールアップする研究は他人まかせ、多くは、例えばタイやインドネシアの産業界に頼っているのが現状ある。この現状を良いとか悪いとか言うのではなく、日本のマスコミを含めた国民が知って欲しいだけである。技術立国が“日本”単独で成り立つなど、それは幻想ということ。如何に他国と調和するのか?そこに十字路国家の妙があるはずだ。
この年末年始に訪れた3国共に十字路国家であると私は定義してる。タイはASEANの真ん中に位置し、周りの国との調整に苦労している。特にカンボジア問題は深刻だ。また、今年は国政選挙があり、街角にはポスターがあふれていて、若者たちは自国の立つ位置を理解する政治家を選択するだろう。一方、ルーマニアは国内選挙は無いがモルドバ共和国のEU加入、あるいはルーマニアへの帰属で、ロシアと直接対峙する可能性は否定できない。どこまで安定にいられるのか?十字路国家として東西、南北との調整が気になるところだろう。
対して日本は、西側の中国とは話さえできず、北のロシアとはガス欲しさだけに、ウクライナ問題などは蚊帳の外におく。東に目を移せば、国際法を無視する米国に正論さえ言えず、国際法や人権は無視だ。さらには台湾問題やウィグル問題でも正論を吐けない状況である。特にASEANとは距離を置きつつあり、年末のタイではあまり日本人をみなかった。円とバーツの関係は、この数年の円安で、経済の不均等は深刻だ。タイで生産する食料品など、当然値上げせざるを得なく、日本の物価を押し上げるだけの関係だ。
私は日本が十字路国家の一つであり、四方の国家との調整には苦労するが、四方からの情報を受けることで、国家の進むべき方向が見えやすく、国家の進むべき道を柔軟に選択できるはずと思っている。そこに強みがあるはずだが、今の日本はどうだろうか?皆さん、他国を無視し、日本ファーストが蔓延している。世界の孤児に見えるのは私だけか?
新年早々、タイに向かった。タイでは私がお世話になっているVISTECと日本の産総研の合同シンポをオーガナイズした(写真3,4)。今回は2つの組織を中心に日本の企業3社、タイの企業にも参加いただいた。この趣旨は、産総研の若手研究者に日本の研究者の立つ位置を知って欲しいという思いだ。同じく“バイオモノづくり”を志向しているが2国間では全く違う立つ位置にいる。つまり、日本の研究機関の多くは主に1リットルから多くても10リットル程度の培養による”バイオもの作り “を研究対象とするが、タイの企業が担うのは100リットルからトンレベルにスケールアップされた世界の話だ。その苦労話を日本の若手に聞かせたかったのである。併せてプラント見学し、自分たちと違う”バイオもの作り“を実感してもらう狙いだ。
スケールアップの難しさは、驚くような話ではなく、日本では法規制、環境問題で、多くの企業は、スケールアップする研究は他人まかせ、多くは、例えばタイやインドネシアの産業界に頼っているのが現状ある。この現状を良いとか悪いとか言うのではなく、日本のマスコミを含めた国民が知って欲しいだけである。技術立国が“日本”単独で成り立つなど、それは幻想ということ。如何に他国と調和するのか?そこに十字路国家の妙があるはずだ。
この年末年始に訪れた3国共に十字路国家であると私は定義してる。タイはASEANの真ん中に位置し、周りの国との調整に苦労している。特にカンボジア問題は深刻だ。また、今年は国政選挙があり、街角にはポスターがあふれていて、若者たちは自国の立つ位置を理解する政治家を選択するだろう。一方、ルーマニアは国内選挙は無いがモルドバ共和国のEU加入、あるいはルーマニアへの帰属で、ロシアと直接対峙する可能性は否定できない。どこまで安定にいられるのか?十字路国家として東西、南北との調整が気になるところだろう。
対して日本は、西側の中国とは話さえできず、北のロシアとはガス欲しさだけに、ウクライナ問題などは蚊帳の外におく。東に目を移せば、国際法を無視する米国に正論さえ言えず、国際法や人権は無視だ。さらには台湾問題やウィグル問題でも正論を吐けない状況である。特にASEANとは距離を置きつつあり、年末のタイではあまり日本人をみなかった。円とバーツの関係は、この数年の円安で、経済の不均等は深刻だ。タイで生産する食料品など、当然値上げせざるを得なく、日本の物価を押し上げるだけの関係だ。
私は日本が十字路国家の一つであり、四方の国家との調整には苦労するが、四方からの情報を受けることで、国家の進むべき方向が見えやすく、国家の進むべき道を柔軟に選択できるはずと思っている。そこに強みがあるはずだが、今の日本はどうだろうか?皆さん、他国を無視し、日本ファーストが蔓延している。世界の孤児に見えるのは私だけか?
写真1 ブカレスト市内の公園は雪に覆われているが、寒さが半端でない。
写真2 近くの公園では、臨時のスケートリンクができ、大賑わいだ。
写真3 VISTECは設立10年を迎え、多くのプロジェクトを抱えている。
写真4 最終日はマヒドン大学で皆さんの研究進捗状況を聞き、次の再開を約束した。
- 著者のご紹介
- 近江谷 克裕(おおみや よしひろ) | 1960年北海道函館市に生まれる。1990年群馬大学大学院医学研究科修了。ポスドクなどを経て、1996年静岡大学教育学部助教授、2001年より産業技術総合研究所研究グループ長に就任、2006年10月より北海道大学医学研究科先端医学講座光生物学分野教授に就任、2009年より再び産業技術総合研究所研究主幹研究員、研究部門長、首席研究員を経て退職、2025年より大阪工業大学、ブカレスト大学客員教授として研究を継続する。生物発光の基礎から応用まで、生物学、化学、物理学、遺伝子工学、そして細胞工学的アプローチで研究を推進する。いまでも発光生物のフィールドワークがいちばん好きで、例年、世界中の山々や海で採取を行っている。
