カルナバイオサイエンス株式会社

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Pipelineパイプライン

BTK阻害剤
sofnobrutinib (AS-0871)

高選択的な非共有結合型BTK阻害剤

標的
BTK(ブルトン型チロシンキナーゼ)
対象疾患
免疫・炎症
モダリティ
低分子化合物
開発ステージ
フェーズ1(オランダ・完了)

作用機序

BTKはTecチロシンキナーゼファミリーに属するキナーゼで、主にB細胞や骨髄球系細胞の単球、マクロファージ、好中球、好塩基球、肥満細胞などに発現しています。 BTKは、アレルギー疾患において好塩基球やマスト細胞に発現するFcɛ受容体を制御し、疾患の発症に重要なヒスタミンやロイコトリエンのような化学伝達物質の放出に関与しています。 B細胞においては、B細胞抗原受容体(BCR)シグナル伝達で重要な役割を担っており、リウマチや全身性エリトマトーデスのような自己免疫疾患において、異常なBCRシグナルによる自己抗体の産生に関わっていると考えられています。さらにBTKは骨髄球系細胞のFcγ受容体のシグナル伝達も調節しており、リウマチ症状を悪化させるIL-6やTNF-αなどの炎症性サイトカインの産生にも関わっています。これらのことから、BTKはアレルギー疾患や自己免疫疾患の治療標的分子として注目されています。

非臨床試験

sofnobrutinibは不活性型BTKを標的として創製された非共有結合型BTK阻害剤です。非がんを対象としていることから、副作用を最低限に抑えることを目的として、非常に高いキナーゼ選択性を有していることが特徴です。非臨床試験において、sofnobrutinibはヒトのB細胞や好塩基球の活性化を強力に阻害し、TNF-α、IL-17、MCP-1やIL-6などの炎症性サイトカインの産生を抑制することが示されています。また、sofnobrutinibはリウマチモデルであるコラーゲン誘導関節炎モデルマウスや、アレルギー性皮膚炎モデルであるIgE依存性皮膚炎モデルマウスにおいて、優れた治療効果を示しています。

臨床試験

sofnobrutinibのフェーズ1試験は、健康成人を対象に、経口投与による単回投与用量漸増(SAD)試験および反復投与用量漸増(MAD)試験の2つの試験をオランダで実施しました。SAD試験では最高用量の900 mgまでの全ての用量で安全性及び忍容性が確認されました。また、sofnobrutinibは良好な薬物動態を示し、薬力学的評価では、B細胞および好塩基球の活性化を100 mg以上で強く阻害しました。タブレット型の新製剤で実施したMAD試験においても、全ての用量で安全性及び忍容性が確認され、投与用量依存的に血中薬物濃度が増加し、良好な薬物動態プロファイルが確認されました。また、150 mg BID(1日2回投与)および300 mg BID投与群において、薬力学的作用の指標である好塩基球の活性化を強力に阻害(90%以上)しました。本フェーズ1試験の結果から、sofnobrutinibの安全性、忍容性、並びに良好な薬物動態プロファイルと薬力学的作用が確認され、フェーズ2への移行が支持されました。

参考文献

  1. Design and Synthesis of Novel Amino-triazine Analogues as Selective Bruton's Tyrosine Kinase Inhibitors for Treatment of Rheumatoid Arthritis. J Med Chem. 2018 Oct 11;61(19):8917-8933.
  2. Design and synthesis of novel pyrimidine analogs as highly selective, non-covalent BTK inhibitors. Bioorg Med Chem Lett. 2018 Jan 15;28(2):145-151.
  3. 'Turn On/Off' fluorescence probe for the screening of unactivated Bruton's tyrosine kinase. Bioorg Med Chem Lett. 2015;25(10):2141-2145.
  4. TR-FRET binding assay targeting unactivated form of Bruton's tyrosine kinase. Bioorg Med Chem Lett. 2015;25(10):2033-2036.