カルナバイオサイエンス株式会社

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ProteomicsProfiler™ ~タンパク質発現レベルと薬剤感受性の相関解析サービス~

カルナバイオサイエンスはオランダ Oncolines社によるヒト腫瘍細胞株を用いた化合物受託解析サービスを提供しております。Oncolines社で独自に構築された各種データベースと卓越した解析技術により、がん創薬に有用な解析結果をお届けいたします。

ProteomicsProfiler™ は、がん細胞株に発現している特定のタンパク質がお客様の薬剤感受性にどのように相関しているかについてバイオインフォマティックス解析を行い、タンパク質発現に基づいて予測される応答バイオマーカーの同定に役立てて頂けるサービスです。遺伝子発現情報はタンパク質発現レベルの代用マーカーとしてよく用いられていますが、実際の細胞環境においては、急速なタンパク質分解等によって特定タンパク質の発現量が大きく変化している可能性がある為タンパク質の発現レベルを用いて薬剤感受性との相関を解析することも重要です。ProteomicsProfiler™によって得られたデータを、お客様開発薬剤の細胞株に対する反応のメカニズム解析、標的タンパク質の同定、バイオマーカーの発見、または抗がん剤治療における患者層別化等にご活用ください。

本サービスご利用にはOncolines™ ヒト腫瘍細胞株増殖アッセイ102種細胞株フルパネルでの化合物評価結果を活用されることをお勧め致します。
試験結果はInteractive Report(HTML形式)またはPDFファイルにてお届け致します。

納期:約2週間(Oncolines™ 含まず)

<ご利用ガイド>

お客様薬剤の感受性または耐性と遺伝子発現との相関解析にはGeneNominator™をご利用ください。

開発薬剤のバイオマーカーについて新たな洞察を得る

お客様の薬剤がどのようにある特定のタンパク質、あるいは生物学的に相互機能する一定のタンパク質ネットワークを通して作用するのかご存じですか?
ProteomicsProfiler™には以下の解析が含まれます:

  • お客様の薬剤感受性/耐性とがん細胞株に発現している>7,000のタンパク質発現レベルとの相関をコンピューター解析
  • キナーゼ等のリン酸化されたタンパク質群を含め、機能によってグループ化されたいくつかのタンパク質群との相関解析
  • 特定タンパク質発現に対してのお客様化合物の相関データと既存>200薬剤との相関データを比較
図 (A) 腫瘍細胞株における遺伝子およびタンパク質発現レベルの散布図:EGFR (左、強い相関) および KDR (右、相関なし)
(B) trametinib IC50値と214種類のタンパク質発現レベル間の相関をピアソン相関係数にて表したBoxplot。リン酸化MEKタンパク質の高い発現はtrametinibの薬剤反応と強く関連しています。

特定の生物学的なコンテクストにフォーカス

ProteomicsProfiler™タンパク質発現相関解析では、細胞増殖(生存率)アッセイで得られた化合物の薬物反応結果と個々のタンパク質の異なる発現レベルとの関係が明らかにされます。解析では2つの独立したデータセットから取得された数千のタンパク質がカバーされており、偏りのないアプローチによって仮説検証を行ったり、化合物との予期せぬ関係を紐解くことができます。タンパク質との相関に関連性を与えるために、リン酸化タンパク質や薬剤耐性に関与するタンパク質など、特定のコンテクストに関与することが知られているタンパク質のサブセットが選ばれており、同じシグナル伝達経路または同じ生物学的プロセスで関係しているタンパク質群を解析することでタンパク質との相関の様がさらに深く調べられることとなります。

化合物が持つタンパク質とのユニークな相関を見つける

お客様の化合物と相関の強いタンパク質群においては、事前にプロファイリングされた様々なメカニズム (MAPK経路阻害剤、DNA損傷応答阻害剤、古典的な化学療法など) をもつ>200薬剤結果と比較されます。網羅的に可視化されたProteomicsProfiler™の結果から、お客様化合物が持つユニークな相関プロファイルを知ることが出来ます。

タンパク質の発現レベル検出技術

各がん細胞株のタンパク質発現レベル検出に用いられる技術は逆相タンパク質アレイ (RPPA) や質量分析法 (MS) 等などですが、それぞれの検出技術には長所と短所があります (表1)。ProteomicsProfiler™のバイオインフォマティクス解析にはこれら両技術で検出されたタンパク質発現データが用いられています。

表1: タンパク質発現レベル検出に用いられるRPPAとMSのそれぞれの長所と短所。

RPPA MS
長所 スループットが良い スループットおよび費用効率が良い
リン酸化など翻訳後修飾の検出可 感受性・特異性の高さ
短所 検出が抗体の特異性に依存するため予期しないオフターゲット検出の可能性 低発現のタンパク質や翻訳後修飾の検出に限界あり
入手可能な抗体の数に制限あり 発現データの利用可能な細胞株の数がタンパク質によって異なる可能性あり

Case Study:タンパク質発現解析により予測薬物反応マーカーが同定されたMEK阻害剤 trametinib

  • Trametinibは選択性の高いMEK阻害剤で現在BRAF-V600変異を有するがんの治療薬としてFDAに承認されています。
  • Oncolines™腫瘍細胞株パネルによる細胞増殖(生存率)アッセイにおいて、trametinibはBRAF 変異細胞株ほぼ全体に反応する一方、KRASおよびNRAS変異株に対しては臨床で観察されている結果を反映したバラつきのある反応を示しました (図 1)。[1]
  • 変異非依存性の薬物反応バイオマーカーを同定するために、102がん細胞株に対するtrametinibのIC50値と同120細胞株に発現している数千のタンパク質の発現レベルをバイオインフォマティクス解析を用いて相関関係を調べた結果、リン酸化MEKの発現とtrametinibに対する細胞株の感受性増加に強い相関がみられ (図 2)、MAPK経路の活性増加がtrametinibに対する細胞株の感受性を高めることが示唆されました。

図1: 102がん細胞株に対するMEK阻害剤trametinibの薬剤評価結果を遺伝子変異解析結果と合わせIC50値によるランキングで表したウォーターフォールプロット。

図2: タンパク質発現解析。(左) trametinib (紫) およびOncolines社リファレンス化合物 (青) のIC50値と最も強い負のPearson相関を示すトップ10発現タンパク質。trametinibの薬剤反応とリン酸化MEKタンパク質との間には強い相関関係が観察されています (ピアソン相関 r = 0.44)。(右) リン酸化MEKタンパク質の trametinibに対する反応と発現との相関関係。紫色のデータポイントはKRAS変異細胞株を示し、青色のデータポイントはKRAS野生型細胞株を示しています。

[1] Blumenschein et al. (2015) Ann Oncol. 26, 894-901

Oncolines社
Oncolines B.V. (旧 Netherlands Translational Research Center B.V., NTRC) について
Oncolines B.V.はオランダ・Oss市にある中核的研究施設内の拠点から、オンコロジーおよびがん免疫療法分野において開発薬剤/医薬品候補の差別化を追求する世界中の製薬・バイオテック企業へ精密医療サービスを提供する企業です。データ解析等で卓越した専門技術を備えたエキスパートで構成されており、薬剤の特徴、活性、選択性の見極め、他の薬剤との差別化を質の高い一連のサービスでサポート致します。同社は2011年の創設後2021年にNetherlands Translational Research Center B.V. (NTRC)からのスピンオフを経て2023年よりSymeres Netherlands B.V.のdaughter companyとなりました。
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